大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和49年(行ウ)173号 判決

原告

エイ・エム、アイ日本株式会社

右代表者

アーノルド・ビー・コーヘン

右訴訟代理人外国弁護士資格者

トーマス・エル・ブレークモア

右訴訟代理人

三ツ木正次

外三名

被告

東京税関長

右指定代理人

高野猛

外三名

被告

横浜税関本牧埠頭出張所長

右指定代理人

柿沼正道

外一名

被告

神戸税関長

右指定代理人

室田昌彦

外一名

右被告三名指定代理人

鎌田泰輝

外二名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一、原告

1  被告東京税関長が昭和四八年七月四日付で原告に対してした物品税更正請求拒否処分を取り消す。

2  被告横浜税関長本牧埠頭出張所長が昭和四八年七月一八日付及び同年八月二四日付で原告に対してした各物品税更正請求拒否処分をいずれも取り消す。

3  被告神戸税関長が昭和四八年七月一二日付で原告に対してした物品税の更正を取り消す。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決

二、被告ら

主文と同旨の判決

第二  原告の請求原因

一1  原告は、その輸入に係るロー・モデル第一五〇号コーヒー自動販売機(以下「本件物品」という。)について、被告東京税関長に対しては別表第一記載のとおり、被告横浜税関本牧埠頭出張所長に対しては別表二記載のとおり、それぞれ物品税申告書を提出した。

2  原告は、昭和四八年六月六日被告東京税関長及び被告横浜税関本牧埠頭出張所長に対し、それぞれ、本件物品が物品税の課税対象ではないとして、物品税額を零とする旨の更正の請求をしたところ、被告東京税関長は同年七月四日付で、被告横浜税関本牧埠頭出張所長は同年七月一八日付及び八月二四日付で、それぞれ、物品税更正請求拒否処分(以下「本件各拒否処分」という。)をした。

二、被告神戸税関長は、原告が昭和四七年一二月二一日輸入申告した本件物品について、昭和四八年七月一二日付で、物品税法(昭和四八年法律第二二号による一部改正前のもの)別表課税物品表(以下「法別表」という。)九の5の「湯沸かし器」に該当するとして、課税標準額金一二、八七七、一四八円、物品税額金二、五七五、四〇〇円とする更正(以下「本件更正」という。)をした。

三、しかしながら、本件各拒否処分及び本件更正は、次の理由により違法であるから、その取消しを求める。

1(一)  本件各拒否処分の通知書及び本件更正の通知書にはいずれもその理由が記載されていない。右各処分の理由を当該処分の通知書に記載するのは、当該処分の正当性を明示することによつて、一方において、恣意的な処分を抑止すると共に、他方において、納税者に不服申立てをすべきかどうかの判断資料を与えることにある。

ところで、本件各拒否処分の通知書には、「改正前の物品税法別表課税物品表第九の五に掲げる『湯沸かし器』には、改正前の同法施行令別表第一第九の五において、物品税の課税対象たる『湯沸かし器』に『コーヒー沸かし器』を含むものと規定されており、かつ、同規定非課税物品欄におい、『湯沸かし器』には『商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの』の規定がないため、当該更正の請求にかかる物品は、物品税法上の課税物品である。」という記載はあるが、右の記載によつては、本件物品が何故に物品税法上の「湯沸かし器」に該当するのか明らかでなく、単に本件物品が「湯沸かし器」に該当するとしても非課税物品とされるのではないかとの点についてのみ形式的理由を示しているに過ぎない。また、本件更正の通知書には、「物品税不課税扱いが誤まりであつたので課税扱いする。」という記載はあるが、何故に物品税不課税扱いが誤りであつたのか、何故に課税扱いするのか明らかでない。したがつて、右各通知書には本件各拒否処分及び本件更正の実質的な意味での理由が全く記載されていないから、本件各拒否処分及び本件更正は実質的な理由を欠く違法な処分である。

(二)  およそ国民に不利益をもたらす行政処分について、行政庁がその理由を明示すべきことは、憲法第三一条の要請するところであり、もし、国税通則法が本件更正の如き不利益処分につき理由附記を不要としていると解せられるならば、かかる国税通則法は憲法第三一条違反として違憲無効たるを免れず、かかる国税通則法に基づき、実質的理由が全く記載されずにされた本件更正は違法な処分である。

2  本件物品の構造機能等は別紙記載のとおりであつて、不課税物品たる「自動販売機」(投入された硬貨の真贋を判別し、所定の金額に達するまで真の硬貨が投入されたことを確定した上で、「コーヒー沸かし器」を作動させるに至る機器部分)と課税物品たる「コーヒー沸かし器」とが結合されたものであるところ、本件物品に「性状、機能、用途その他についての重要な特性を与える物品」は「自動販売機」部分であり、「コーヒー沸かし器」は副次的なものに過ぎないから、法別表課税物品表の適用に関する通則(以下「通則」という。)第二号により、本件物品は、「自動販売機」部分のみから成るものとみなされ、結局において不課税物品となるべきものである。

(一) 通則第二号にいう「重要な特性」の第一次的客観的判断基準は「商品としての特性」である。

本件物品は、ホツトコーヒーの自動販売による対価を購入者から徴収することにより、収益をあげることを主たる目的としており、ホツトコーヒーの製造は、収益の確保という主たる目的のための手段として副次的機能を有するに過ぎず、かつ、本件物品の製造にあたつては、「自動販売機」部分に関する技術が最も重要なものであり、「コーヒー沸かし器」に関する技術はほとんど重要性をもたず、このことは原告が取扱つている他の各種の自動販売機についてもいえる。このように本件物品の商品としての価値を決定するのは、「自動販売機」部分であり、したがつて商品としての特性も「自動販売機」部分にあるのであり、それ故、それは売れるのである。

(二) 右「重要な特性」の第二次的客観的判断基準は、原価構成割合であると解すべきところ、本件物品の原価構成割合は、「自動販売機」部分が80.9パーセント、「コーヒー沸かし器」部分が19.1パーセントであるので、本件物品は「自動販売機」部分のみから成るものとみなされる。

よつて、本件各拒否処分及び本件更正は、本件物品に対し違法に法別表を適用してされたもので、違法な処分である。

3  仮に本件物品が形式的には物品税法上の「湯沸かし器」に該当するとしても、本件物品のようにコーヒーの自動販売用に供されるものとして特殊な性状を有するものは、物品税法上の非課税物品と解すべきである。

(一) 物品税は、一般的に、しやし品、趣味、娯楽用品ないしは便益品的な性格を持つ特定の消費財の消費の背後に予想される担税力に対して、応能的に課税することを建前とした間接消費税と解されているから、形式的に法別表に掲げる物品に該当するとしても、このような性格を有しない生産財的な物品に物品税を課すことは、物品税法の予定しないところであるので、右のような物品を非課税物品とするか否かは、行政府である内閣の裁量に属せず、政令中に非課税物品とすべき明文が存在しない場合でも、当該物品の有する性格から導かれる当然の結論として、非課税物品として課税対象から除外されなければならない。

(二) 本件物品の主たる目的は、ホツトコーヒーの自動「販売」による収益の確保であつて、本件物品が、物品税法の課税対象である「消費財」ではなく、「生産財」としての性格を有しているから、本件物品に対し物品税を課すことは物品税本来の目的と矛盾する。昭和四八年政令第一一〇号による改正前の物品税法施行令(以下「旧施行令」という。)の立案当時は、本件物品の如き物品が物品税法上の「湯沸かし器」として課税対象とされる可能性があるとは全然考えられなかつたから、特に非課税物品欄に掲記しなかつたまでのことで、その後、本件物品の如き物品が、形式的解釈によれば物品税法上の課税対象となりうる事態が生じたが故に、右改正による物品税法施行令(以下「新施行令」という。)は、本件物品の如き「商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの」は課税対象外であることを確認したに過ぎない。

よつて本件各拒否処分及び本件更正は、物品税法の解釈を誤つた結果、不課税物品ないし非課税物品である本件物品を課税対象としてされた違法な処分である。

第三  請求原因に対する被告らの認否及び主張

一、請求原因に対する認否

1  請求原因一及び二の事実は認める。

2  請求原因三の事実のうち、本件各拒否処分の通知書及び本件更正の通知書にそれぞれ三の1の(一)記載の通りの理由記載があること及び同2のうち本件物品の構造機能等が別紙記載のとおりであることは認めるが、その余の原告の主張はすべて争う。

二、被告らの主張

本件各拒否処分及び本件更正は、次に述べるとおり、いずれも適法である。

1  更正の請求の拒否処分の通知書及び物品税の納税申告書を提出した者に対する更正の通知書に処分の理由を附記すべきことは、法律上要求されていないから、理由欠缺自体は何ら違法性を生じるものではない。

2(一)  ある物品が法別表に掲げられた物品に該当するかどうかは、当該物品の性状、機能、用途その他を総合して、当該物品が法別表に掲げられた物品の機能を構造的に有するかどうかによつて判定すべきであり、取引上の呼称、販売目的及び他の法令による名称等によつて判定するものではない。そしてその性状、機能、構造及び用途等については、当該物品に使用された原材料、当該物品の形態、構造、製造方法、性質、性能、用途、使用方法及び価格等の実質を総合的に検討の上、当該物品の全体について判定すべきである。

(二)  本件物品は、分離独立させればそれだけでは本来独立の用途性を有せず、機能を果たし得ない「自動販売機」部分が、それ自体として独立に十分な用途を有し、かつ、機能しうる「コーヒー湯沸かし器」に附加され、これと組み合わされた結果、全体として一個の物品となつたもの、つまり、「コーヒー沸かし器」そのものであつて、「自動販売機」部分は、金銭装置に過ぎず、したがつて、本件物品には通則第二号の適用はない。

(三)  仮に通則第二号の適用があるとしても、本件物品は、その構造、機能、用途からみて湯を沸かしこれにコーヒー等の原料を混合していわゆるホツトコーヒーを作る機能、すなわち、「コーヒー沸かし器」部分にその機器としての重要な特性があり、「自動販売機」部分は、コインの投入により「コーヒー沸かし器」を自動的に作動させるためだけの副次的なものに過ぎない。原告の主張する「収益の確保」は、本件物品の所持者あるいは所有者の設置目的であり、せいぜい二次的な用途及び機能に過ぎず、本件物品の本質的な用途及び機能は、ホツトコーヒーを調理製造してこれを機外に排出する省力自動機器であることにある。

また、重要な特性は、物品税法上の物品の所属を決定するもので、ある物品が商品であるか否かにかかわりなく定まる概念であるから、これをもつぱら「商品としての価値」「商品としての特性」から論じようとするのは誤りであり、仮に原告のいう「商品としての特性」なるものをあえていうとしても、本件物品の場合は、「自動販売機」部分はコインの投入によりエネルギーを作動させるためだけの副次的機能に過ぎないから、「商品として特性」は、「自動販売機」であることにあるのではなく、ホツトコーヒーを製造する機能を備えていることにある。

なお、本件物品の特性が「コーヒー沸かし器」であることにあると判断すべきものである以上、原価構成割合について検討する要はないが、本件物品の「自動販売機」部分の相当の部分は、「コーヒー沸かし器」部分にも共通する部分が含まれているので、原告主張の原価構成割合は、論拠に乏しい。

(四)  よつて、本件物品は、旧施行令別表第一の九の5の定義欄の規定に従い、法別表の「湯沸かし器」に該当するものと認められる。

3(一)  物品税法は、課税物品について個別掲名主義をとつており、法別表に掲げられている物品については、課税要因を排除する明確な規定がある場合に限り物品税が課されないことになるのであり、生産財的性格を有する物品でも例外ではない。

現実かつ具体的にどのような物品を物品税の課税対象として選択するかは、すぐれて経済政策ないし立法政策的な課題であり、現行実定物品税法は、タクシー、ハイヤー用の乗用車、パチンコ機のように生産財的な物品をも課税物品に取り込んでいるのであり、生産財的な物品は当然に非課税であるとする立場をとつていない。

本件物品は法別表の「湯沸かし器」として分類され、しかも旧施行令別表第一の九の5の非課税物品欄においては「商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの」を非課税物品とする旨の規定がなかつたら、本件物品は非課税物品ではなかつたものであり、したがつて当然課税物品となるものである。

(二)  昭和四八年政令第一一〇号による物品税法施行令の改正は、物品税法(以下「法」という。)第九条の規定による委任に基づき、産業経済に及ぼす影響等を考慮した結果、コーヒー自動販売機は、省力化物品として労働力不足対策の上からもその普及は好ましいと考えられたので、本件物品の如き、「商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの」を非課税物品としたものであり、もともと非課税物品に当たるものを確認的に明らかにしたものではない。

(三)  よつて、旧施行令においては、本件物品は非課税物品に該当しないから、物品税の課税対象とされたのは当然である。

第四  被告らの主張に対する原告の認否被告らの主張は、すべて争う。

第五  証拠関係〈略〉

理由

一請求原因一及び二の事実は、当事者間に争いがない。

二原告は、本件各拒否処分及び本件更正は違法であると主張するので、この点について判断する。

1  原告は本件各拒否処分及び本件更正の通知書には実質的理由が全く記載されていないから違法であると主張する。

しかしながら、本件各拒否処分及び本件更正の通知書に理由を附記すべきことは、法律上要求されていないから、右各通知書に理由の附記がないとしても、本件各拒否処分及び本件更正の違法事由となるものではない。よつて、原告の右主張は、理由がない。

また、原告は、理由の附記が不要とされているとするならば国税通則法は憲法第三一条に違反すると主張するけれども憲法第三一条が更正通知書について理由の附記を要請していると解することはできないから、原告の右主張も、理由がない。

2  次に、本件物品が、法別表に掲げられた「湯沸かし器」に該当するかどうかについて判断する。

原告は、本件物品は、不課税物品たる「自動販売機」と、課税物品たる「コーヒー沸かし器」とが結合されたものであるところ、通則第二号を適用すれば、重要な特性を与える物品は「自動販売機」であつて、本件物品は、「自動販売機」のみから成るものとみなされるから、不課税物品となると主張するので、まず、この点について判断する。

課税物品の所属の決定については通則に規定されているところであるが、ある物品が、法別表に掲げられた物品に該当するかどうかは、他の法令による名称及び取引上の呼称等によつて決定すべきではなく、当該物品の性状、機能及び用途等を総合して判定すべきである。

しかして、通則第二号に規定する二以上の物品が総合されたものの判定の規定は、一個又は一組の物品で二以上の機能又は用途を有するものを判定する場合において適用されると解すべきであり、二以上の機能又は用途を有するとは、それぞれが独立した機能又は用途を有する場合を指すものと解すべきである。

ところで本件物品の構造機能等が別紙記載のとおりであることは、当事者間に争いがなく、右事実によれば、本件物品は電気を熱源とする装置で水を熱し、右物品内においてホツトコーヒーを調理する部分、すなわち「コーヒー沸かし器」と投入された硬貨が適正であるかどうかを判断し、硬貨が適正なものと判断された場合は機器を作動させる金銭装置の部分、すなわち「自動販売装置」とから成り、硬貨が投入されると自動的にホツトコーヒーが完成し、供給される物品であることが認められる。

そうすると右の「自動販売装置」は硬貨の投入により「コーヒー沸かし器」を自動的に作動させるだけであつて、「コーヒー沸かし器」に付加されなければ、それ自体有効適切に働き得ない性質のものであることはその性質上明らかである。してみると「自動販売装置」は独立の機能を営み、又は独立の用途を有する場合に当たるとはいえない。

なお、施行令の規定を検討しても、「自動販売装置」が独立の機能を営む場合に当たるとの前提に立つものとは解されない。すなわち、旧施行令別表第一の九の2「大型冷蔵庫」、同5「冷水器」、同8「小型冷蔵庫」、新施行令別表第一の九の6「湯沸かし器」については、右物品のうち「商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの」を非課税物品と規定している。右の「商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの」とは、当該物品に硬貨又はメタルを投入することにより商品が自動的に販売される方式のもの、すなわち「自動販売装置」を指すものと解されるから、旧施行令及び新施行令は「自動販売装置」付の「大型冷蔵庫」等であつても、それは、法別表に掲げられた「大型冷蔵庫」等に該当することを前提にしているというべきであり、したがつて「自動販売装置」は独立の機能を有するものではなく、副次的のものであると解しているとみるべきである。

そうすると、本件物品は、通則第二号の二以上の物品が結合する場合には該当しないというべきである。

ところで法別表九の5の「湯沸かし器」とは、器具自体に装備した熱源で水を熱し、熱くなつた湯を飲用等に供する目的でこれを器外に供給する構造を有するものを指すものと解され、かつ、旧施行令別表第一の九の5によれば「湯沸かし器には、コーヒー沸かし器を含むものとする」旨規定されているから、本件物品が法別表九の5の「湯沸かし器」に該当することは明らかである。よつて、原告の主張は理由がない。

3  原告は、本件物品が「湯沸かし器」に該当するとしても、本件物品のようにコーヒーの自動販売用に供されるものとして特殊な性状を有するものは、物品税法上の非課税物品と解すべきであるし、本件物品は生産財的な物品であるから、そもそも物品税法が課税物品として予定していないと主張するので、この点について判断する。

原告の主張する「消費財」と「生産財」との区別自体相対的なものであり、法はタクシー・ハイヤー用の「普通乗用自動車」(法別表七の2)、ビリヤード用具(法別表八の3)、「ぱちんこ機」(法別表八の5)等主として営業用に使用される物品をも課税物品としているのであるから、生産財的な物品は、当然に非課税であると解することはできない。よつて、原告の右主張は理由がない。

なお、原告は、昭和四八年年政令第一一〇号による施行令の改正は本件物品が非課税であることを確認したにすぎないと主張するが、課税物品とは、法別表に掲げられた物品のうち、法第九条の規定により物品税を課さないものとされる物品(非課税物品)を除いた物品をいい、特殊な性状、構造又は機能を有することに基づく非課税物品の基準は、施行令別表第一の非課税物品欄に品目別に具体的に定められており、この基準に該当しない物品については、たとえ特殊な性状、構造又は機能を有するものであつても、非課税物品に当たらないことは当然である。そして、旧施行令には、「湯沸かし器」について非課税物品として「商品の自動販売用に供されるものとして特殊な性状等を有するもの」との規定はなかつたのであるから、本件物品が非課税物品に該当しないことは明らかである。よつて原告の右主張も理由がない。

以上のとおり本件各拒否処分又び本件更正には、原告主張の違法はないというべきである。

三よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(三好達 時岡泰 成瀬正己)

別表一、二〈省略〉

別表

第一 本件コーヒー自動販売機の概要

型式  一五〇

外型寸法  高さ25×幅18.5×奥行14.5(インチ)

重量  六五ポンド

使用電源  110ボルト9.8アンペア

給湯タンク  1.1ガロン

金銭装置  単一価格設定(一〇セント使用可)

そして客の好みにより、ブラツク、砂糖入り、クリーム入り、砂糖およびクリーム入りの各種のコーヒーが選択できるようになつている。

第二 本件コーヒー自動販売機の構造

一、本件コーヒー自動販売機は、次の各部分に大別される。

(1) 金銭装置

投入された硬貨が適正であるかどうかを判断し、硬貨が適正なものと判断された場合は、次のコントロールボツクスに内蔵されたマスターリレーとタイマーアツセンブリーを作動させる。

(2) コントロールボツクス

マスターリレーおよびタイマーアツセンブリーを内蔵し、コーヒー、砂糖およびクリームの各材料の供給装置を始動させる。

(3) 給湯タンク

ヒーターと温度調節により湯を一定の温度に保つ。

(4) ホツパーアツセンブリー

コーヒー、砂糖、クリームをそれぞれ貯蔵し、また内部には送り出し機構を有する。

(5) その他

内部の水蒸気を取り除く換気扇用フアンコーヒー等と湯を混合する混合皿等がある。

第三 硬貨が投入されてからの本件コーヒー自動販売機の作動過程

一、硬貨が投入されると、コインリジエクターリンケージアツセンブリーにおいてその硬貨が適正なものかどうかが判断される。硬貨が適正と判断されると、マスターリレーおよびタイマーアツセンブリーが作動する。

二、タイマーアツセンブリーの作動と同時にそれに同調しているホツパーアツセンブリー内のモーターが作動し、コーヒー、砂糖、クリームの各材料を混合皿に供給する。

なお、各材料の供給量はタイマーアツセンブリー内のサイクルタイマーカムによつて一定量に調節される。

三、一方、湯は、タンクから重力によつて自動的に落下するが、その量は、給湯電磁弁により一定量に調節される。

四、このようにして供給されたコーヒー、砂糖、クリーム、お湯は、混合皿で混合され、本件コーヒー自動販売機の製品であるホツトコーヒーが完成する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例